しかし、
意外や意外。
よく広げてもみないうちに、
「これは面白い。
売らしてもらいまひょ」
ときた。
飛び上がるほど
驚いた。
こんな嬉しいことはなかった。
「とりえず、
見本的に
10枚ばかり織って下さい」
と
言われた。
「この中で
どのようなものを
織らせてもらえばよいですか」
と
尋ねると、
「こんなのが良いです」
と、
洋服向きの
ざっくりしたものを指さされた。
「はい、
わかりました」
と、
嬉しくて嬉しくて、
夢中でお店を出た。
電車を降り、
家への道を
こんなに足どり軽く歩いた覚えはない。
足が宙に浮いていると実感したのは、
まさにこの時だった。
帰り着くと、
さっそく織り始めた。
1枚1枚を世界にひとつと思って
楽しんで織った。
こうしてみよう、
ああしてみよう、
と
思いのままに楽しんだ。
できた、
できた!
10枚できると、
また大阪へ出かけた。
お店の女主人は、
重ねたままのショールを
1枚手に取り、
さっと広げて、
あとは広げてもみないで、
「はい、
10枚分」
と、
即金で
何万というお金を
ポンと出して下さった。
驚いた私は、
「ありがとうございます」
と、
深々とお礼を言った。
「城さん、
作品にブランドを付けて下さいな」
とも
言われた。
この日は、
その大金をふところに、
ブランドを何にしようかと思いめぐらせながら
帰った。
『わたし革命 ~感性を織る~』 城みさを著
(神戸新聞出版センター 1982年刊 ※絶版)より
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