そんな時、
三男が、
「母さん、
すごく面白いものができ始めたね。
家の中だけに置くのはもったいないから、
一度、世に問うてみたら」
と
言ってくれたのである。
あまり自信はなかったが、
息子の好意を無にしないようにと、
思いきって、
心斎橋筋の
一品物ばかり売る老舗へ、
ためしに持って行ってみた。
ローケツ染めをやっている友人に聞いてみると、
「やめときなさい、
10点持っていっても、
買って下さるのは1点か、
良くて2点よ。
しかも、
材料費が出るか出ないくらいの
値段でしか買って下さらないよ」
と
言う。
「でしょうね。
それは当然だわ」
と
答えたが、
考えてみれば、
そのお店以外に
認めて下さるところはない
と
思い、
ようし当たって砕けろ、
と
恐る恐るお店の前に立った。
行き過ぎては
舞い戻りしながら、
やっとの思いで
中へ入って行った。
来意を告げると、
運よく、
女主人が現れた。
私は
紙袋の中のショールを
机の上に出した。
なんと言われるか、
覚悟はしていた。
『わたし革命 ~感性を織る~』 城みさを著
(神戸新聞出版センター 1982年刊 ※絶版)より
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