ここでまた思い出しましたけど、芭蕉の句に「山路来て何やらゆかしすみれ草」というのがあります。ほとんどの人が御存じです。「山路来て何やらゆかしすみれ草」。「山路」と「すみれ草」は動かせないもの。真ん中の七文字の「何やらゆかし」がものすごく芭蕉らしいし、深い味があるんですよ。その「何やらゆかし」の部分をぶっつけて織るのが「さをり」なんです、一口に言って。わかります? 割り切ったもんじゃないんですよ。何とも惑うところが面白いんです。惑うところに自分らしさが見えてくる。「何やらゆかし」のように。たった七文字に人はいろいろ思い巡らせてそれなりの想いを重ねていく、そこによろこびがあるのではないでしょうか。
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