そんなことをやっていたら、私に教えて教えてという人がいっぱいできたので、ちょうど一年目に作品展をやった時はグループ展でした。そこにまた面白いのがあるんです。「みんな作品を持って集まってごらん」 集まってきますね。自分から直かの指図は全くしていません、ここが私のアイデアと思うのが全然ないんですよ。全部バラバラなんです。みんな違うんですよ。しめしめと思ったんです。そして一年目に約束どおり作品展をやりました、大阪の梅田で。糸を分けてもらっていた大きな工場があるんです、メーカー。もうパッと名前のわかるような大きなメーカーがある。そこのメーカーで糸を分けてもらっていたんです。残糸を分けてもらってた。「うちの糸を使ったという、うちの名前だけは出して下さらんのやったら売ってあげましょう。企業秘密になりますから」。 おわかりですよね。企業秘密になるからうちの名前を出すな。はい、絶対申しません。固く守っておりました。ところが作品展に五人、専門の人が来られました、製作の専門の人が。私の手の上に五枚名刺が乗りました。「しかし城さん、これみんなうちの糸でっか? えっ? これ全部うちの糸で織らはったんでっか」って、「グループみんなで織っています、そうですよ。お宅以外どこからも分けてあるうてません。」「ヘエー、ヘェー」と言いながら、一生懸命それをメモして帰られました、五人でそろって。ハアー、どうですか? と言いたかったんですよ。言いたかったけれど黙っていましたけど・・・。頭一つの使いようによって、これほどユニークな布が、ベッベッベと出るやないですかと言いたかったんですけど。それを見て帰られて、その年の次の年の秋でしたか。どこどこのメーカーはこの鍋底景気のどん底のところに、この会社だけが儲かっていると言うて週刊朝日に出たんです。そうするとそこの労働組合が、これ見てみな、ボーナス出せというので、何か痛し痒しですわ、という話を聞きました。それほどに売れたんですよ。だけど次の年は他も皆真似ました。真似たけれど、真似は真似です。いくら経っても機械で織ったものは機械で織ったものなんです。画一的にいかざるを得ないんです。我々はそうじゃない。一本一本が考えられるんです。自分の思いどおりになるんです。動きがあるんです。思いが続いていくんです。だから絶対人に負けないのができるんです。そういうもので、もうすぐにピシャーッとブームも過ぎたんです。これはここで話一遍終わります。
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