そこで、話は行ったり戻ったりしますけど、その前に、こんな楽しいこと、こんな素晴らしいショールをいただくのは嬉しいけれど織り方を教えて下さいよという人があらわれたんです。そりゃそうですよ。織る方がもっと面白い。もっと楽しい。だったら織り方を教えて下さい。仕方ないといったら悪いですけど、それなら十台作ったら安うなるから十台作ってもらいましょう、木工で。十台作ったんですよ。その十台のうち六台、さっと欲しい人があったんです。六人の人に分けました。そこで私は絶対に既製品の真似だけはしなさんな。皆さんの中に、織屋さんもいやはると思いますけど、申し訳ない、失礼なこと言うかもしれませんけど、既製品の真似だけはしなさんな。既製品の真似をしたって能率では負けますよ。そんな馬鹿な競争はしなさんな。そうですよ。既製品だったら二分で織れるところをこっちは一日かかってますよ。好きなことをやってごらん。好きなことさえやりゃいいんだ。どうなったっていいんだ。耳がどうであろうと縞がどうであろうと、そんなのは関係ない。自己表現。ズバズバと自分の思うようにやりなさいと言ったら、その六人がものすごい物を織ったんですよ。私にはない、素晴らしい物を織った。自慢していたわけじゃないけれど、私一人が一万円近くに売れると思っていたら、そうじゃない、誰だって出来るんだということを見たんです。誰だって出来るんだ。恐ろしや、恐ろしや。
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