そしたら今度三番目の息子が「お母さん、面白いものが出来始めたよ。家の中に置くだけでは勿体ない。世に間うてみたら」と言うから、私は大阪心斉橋筋の「丸山」という一品物屋の一番高い物を売るお店へ持っていったんです。そうしたら「これは面白い。売らしてもらいまひょ」と一言で言って下さった。十枚、紙袋に入れて持っていってました。黙って四万円くれたんです。その時あとで「真似する人が出ると困るからブランド名をつけて下さい」と言われたんです。それで私は「みさを」とつけるのは生々しくて嫌、接頭語の「さ」、早乙女の「さ」、紗の「さ」、そういうふうな意味を含めて「さをり」とやったんです。それを手書きで絹のリボンに書いてブランドをつけたんです。そうしたら、その当時、私の友達から電話がかかって「あんたのショール、九千八百円に売れているよ」。二十五年前ですよ。考えて下さい。ショールが九千八百円!ですよ。エーッそんなに? 私、前を通るのが怖かったんです。きれいに飾られているんですよ。そのショーウインドーのいい所に。前を通るのが、自分の作品を見るのが恐ろしかったんです。走りがけて通ったりなんかしていました。
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