そして母親に「機ができたよ」と言ったら母親が飛んできて、その時八十四でした。もう腰がこんなになっていました。その母が飛んできて、喜んで織ったんです。その姿を後ろから眺めて、ハアーこんなにも女は織が好きだったのかと思ったんです。神代の昔から織は続いてきた。それなら楽しい部分を自分たちに取り戻して、労力は、労作は機械にやらせるんだ。もう一遍楽しい部分だけを取り戻そうと思ったんです。そして、よしと思ったんです、やっていたんです。私、永さをという名前です。「みさを、こうして織るんよ。よう見ておきなさい。みさを、みさを」って母は言う。私、おばあちゃんと私は一代違うの。同じ考えでやらんはずだ。私は頭があるぞ。血が通っているぞ。心があるぞ。機械なんかに負けるものかと思ったんです。だから機械のできんことをやってやれ。逆発想です。これで行ったんです。落ちている糸屑をポヅと拾って、パッと挟んだ。あ、面白い。機械には手がない。私には手がある。頭がある。どこに挟めばいいということがわかる。どんどん、どんどん人間的な機械にやっていったんです。そうするとものすごく面白いものになったんです。面白いものになって、それを下駄箱の上へポッ、花瓶をチョッ、どっちも生きるじゃないですか。ああ生きている、生きてる、生きてる。
コメント