そしたら、
「そのベスト、
わしに貸してくれ」
って言うんです。
私は、
障害者の織った
おもしろいベストを着てたんです。
それで、
貸した。
みんな見て、
「ウワッ、
よう似合う」
って。
頭、キンキラキンに
染めてます。
でも、
すごく似合うんです。
みんな感心して、
ジッと眺めてました。
そしたら、
「これ、
俺にくれや」
って言うんです。
「ああ、
困ったことを言う。
とても、それは、
もうあげられん」
と言うた。
「その代わりあんた、
ここにズラッと並んでる
15本の布の中から
好きなのひとつ選んでおいで、
それで縫ったげる」
って言うた。
そうしたら、
その子、
私が一番手放したくない布を
持ってきたんです。
「ウワーッ、
これはやれん。
これは勘弁して。
えらい悪いけど、
これは勘弁して・・・。
その代わり、
・・・・・・・・・エーイ、
もう、それあげるわ!
それ着ていきなさい!」
と言うた。
その子は、
それを着て、
喜んだわ、
喜んだわ。
その時、
うちのスタッフを連れて行ったんですけど、
その彼が、
「君、エエ目してるぞ、
エエセンスしてるぞ。
デザイナーになれるぞ」
って言うた。
その子、
喜びました。
そして、
ターッと走って行きました。
( NHKラジオ
『こころの時代 ~宗教・人生~』
1995年2月4・5日放送より )
★★★ その37 ★★★
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