その人たちが私が突然行って、今のこの服じゃないです、別な服です。障害者の作った服を着て行ったんです。スゥーッと茶髪金髪の学生が来ました。目を見ると切れるような目をしています。ホーすごい、さすがすごいと思ったんです。私をジロッと眺めてスーッと引き返しました。ハーさすがすごいんだ。そしたらまた来るんです。あっ、見込糸あるぞ。これは興味持ったぞと思ったんです。そしてじっと洋服を見ています。スーツと教室へ入ってきます。その時に私が助手として連れていった若者がいたんです、大学を出た若者が。その子がベストを着ていたんです、こんなもっと面白いベストを。「兄ちゃん、ちょっとそれを僕に賃してくれや」と言ったんです。そして彼にそのベストを着せた。ものすごく似合うんです。みんながウワーッと声を出しました。自分も嬉しいんです。ああ嬉しい、欲しいなと思ったんです。「先生、これ僕にくれや」。「えらいことを言われたあ、それはごめん」と私が言った。「あげるのだけば堪忍して。えい、しょうがない」。ここに十五本並んである布、その布は私たちが指導しないで 先生に機の使い方だけを習ってもらって間接指導した、好きに織らせた作品が十五本並んでいた。それはこの学校に機をお貸しして、経験してもらったものです。それで十五本並んでいる。「この中で君の好きなのを選びなさいよ。それで縫うたげるからそれだけは勘弁して」と言ったんです。そしたら彼がずうっと見て歩いて 一往復見て これ! と言うたのは、私の一番気に入っていた、好きなのとピタッと一緒だった。「ハア-えらいことを言うね、あんた、他のならいいけれど、私これが大好き。これだけはごめん。えい、もうしょうがない。今着てるのをあげる」と言うたんです。そしたら嬉しい顔になりました。初めの顔とまるで違いました。私の連れていった助手が「君。いい目をしているね。先生と同じものを選んだね。これはデザイナーになれるわ」と言ったら、なお一層輝いてきたんです、顔が。そしてそれを着てパーッと逃げていきました。もういたたまれなんだんでしょうね。人に見せたかったのかな。そしたら先生が、「あの子ね、ちょっとこの間、廊下のガラスを片っ端から割って歩いた子です」。その子がね、ボスですよね、パーッと行ってしまった。
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