世の中よく考えてみると、金太郎人形、桃太郎人形、百合の花をこしらえる。何だかんだ。何やら刺繍かにやら刺繍っていっぱいあります、世の中に。なぜって電化、電化が激しくなって、女の人が時間をもて余してきた時代です。もう何でもかんでも手芸のはしごをやっていました。その時代に何をしても突き当たってしまって面白くたい。当たり前でしょう。真似して先生以上になれないんでしょう。完壁に真似て、それで最高なんでしょう。真似ることに喜びはないですよ。そんなものしたって駄目。私はそうじゃない。正反対のことをやったんです。そしたらみんな喜んでやったのが、私と同じように誰もが素人でありながら、私と同じように全部これは! と思うものが出来たんです。一人ひとりみんな違いますよ。絵の描ける人はそれらしく、几帳面な人はそれらしく、大胆な人はそれらしく、それぞれの今までの生きた生きざまがそこへぶつかりますよ。一人ひとり違うのが当たり前なんですよ。それを見た時に、これほど人間はすごいものを持っているのに、誰もそれを、よう見つけないで死んでいく。こんな勿体ないことがあるものかと思って、いきり立ったんです。ようし、やってやれ。ようし、やってやれ、とやったんです。そして今年でちょうど二十五年です。
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