駄目主婦は、
その代わり、
織機のことは
よく知っていた。
もちろん、
動力織機である。
世の中は次第に
省力化に向かった。
人件費を節約するために
自動化が進んだ。
無人の工場が現れた。
生産過剰となり、
物がだぶついて
値は上がらない。
それに、
自動織機の輸出もはげしい。
低賃金の国からの
輸入が増え、
かつてのイギリスと
同じ立場になった。
私は、
どこまで行っても
同じではないかと、
冷めた目で世の中を眺めていた。
私が織りを始めたのは、
決してそんなことが原因では
なかった。
ただ幸いなことに、
機械の威力を恐れる人間ではなく、
逆に、
人間の本質的なものの
すばらしさを知ることができた
ということにすぎない。
機械の威力を恐れるのではなくて、
それを使う人間に、
そして、
どこまでもエスカレートする能率化に、
冷めた目を向けるべきだと
思ったからだった。
私の織りに対する
発想なり
欲望は、
それとは全く別のところから
発している。
しかし、
ひとたび織り始めたら、
私の下敷きにあったものが、
物を見る目を変えさせ、
ひとたびアングルを変えて
物を見始めると、
意外に面白いものが
見えてきた。
『わたし革命 ~感性を織る~』 城みさを著
(神戸新聞出版センター 1982年刊 ※絶版)より
わたし革命は、革命的に、はっと気付かされることが満載ですね。
投稿情報: jota | 2010年11 月12日 (金曜日) 22時30分