で、手織の帯がポロポロになってきた。これが一つ欲しいなあと思うのが一つ。母親が「もう一度織りをしたい、織りをしたい」と言い続けていたんです、昔やってたから。だけどそんなもの、今どこにも機、売っていませんよ。デパートに売っていりや私喜んで買いに行って親孝行もするけれど、もう親孝行しようにも売ってませんよと言ったんです。それで放ってあった。耳の外、通していた。ところが二番目の息子が東京からの帰りに新幹線に乗ったら、「隣に座ったおばちゃんで東京まで手織を習いに行ってきたという人と出会ったよ。おふくろなら習わんでもできるね」と、こう言ったんです。その一言に私はカーンと来ました。「やるよ。やれるよ」と言うてしまった。約束したんです。それともう一つは、その私をそういうふうに見てくれていたことが非常に嬉しかった。だからそれに応えようとした。「やるよ。やれるよ」と言ったんです。
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